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[インタビュー]病室以外にも居場所をつくる「埼玉協同病院/ふれあい生協病院」
埼玉県川口市にある「埼玉協同病院」は、地域医療に力を注いできた総合病院です。救急医療やリハビリテーションなどの総合的医療に取り組み、埼玉県南部地域の医療を担う中核病院として多くの患者さんに医療を提供してきました。現在、2026年のグランドオープンに向けて大規模な増改築が進んでいます。その第一弾として、地域包括ケア病棟を有する在宅療養支援病院として「ふれあい生協病院」を建設し、2023年8月に開院しました。
今回この病院を設計された竹中工務店の武田さんに、医療施設としての特徴やデザインのコンセプト、TAJIMAの床材をご採用いただいた理由についてお話をうかがいました。
今回取材にご協力いただいたのは…
株式会社 竹中工務店設計部 主任 武田 基杏さん
平等に多くの方の意見を取り入れてできあがった空間/埼玉協同病院
医療生協さいたま生活協同組合を母体とする埼玉協同病院は、組合員と医療従事者が協力して運営をしていることが特徴の病院です。既存の院内施設は、医療空間だけでなく組合活動拠点としても利用されており、今回の増改築も現場で働く医療従事者以外に、多くの組合員からの意見を取り入れたものとなっています。
武田さん:「床材の選定には実寸のサンプルを貼り合わせたものを使用し、たくさんの医療従事者と組合員の方にデザインへの意見はもちろん、実際に候補の床材のうえを歩いてみたり、水をかけたりなどしながら機能面も検討していただきました。最終決定は投票で行われることが多く、役職のついた方も一般の方も同様に一人一票となるので、皆がよいと思ったものを採用するための公平な決定プロセスが構築されていました。」
このようなケースは、武田さんにとっても経験をしたことのない珍しい決め方だったそうです。
武田さん:「当初は建築コンセプトに合わせて、周辺環境に馴染みやすい色や落ち着いた色を選ぼうと考えていましたが、組合員の方からは斬新な意見をいただくことも多く、想定外の色使いでも実際に検討するとアクセントカラーになってよくなったこともありました。」
従来の仕様にとらわれない利用者からの意見をもとに、床材を選定できたことが新しい経験となったそうです。
また、医療空間として必要な要素はふまえたうえで、一般の方からも「いいね」と言ってもらえるようなデザイン性の高いものを選定することが、面白くもあり難しい部分だったそうです。
みんなの“すみか”-医療拠点だけではない暮らしの拠点に-/ふれあい生協病院
武田さん:「今回の増改築には「みんなの“すみか”-暮らしの拠点-」というコンセプトがあります。災害でもゆるがない医療体制の構築を実現しながら、地域の「暮らし」とともに成長する病院デザインを目指しました。これは「さまざまな人が集まる場所」=集積というデザインイメージにもつながっています。
ふれあい生協病院は、治療だけを目的とした空間ではなく、組合員の活動の拠点や地域に住む方々の健康づくりを推進するヘルスプロモーション(※)ホスピタル(健康増進活動拠点病院)です。健康な方も含めて多くの方々が利用する場所なので、地域交流や周辺地域の中核となる施設としての役割も兼ね備えています。医療従事者、患者、組合員、地域住民など多種多様な人たちが集まるこの病院は、まさに「みんなの“すみか”」と言えるでしょう。
※ヘルスプロモーション=人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにする過程
また、病院のまわりには豊かな自然があるので、その地域の特性を極力内部デザインにも取り込み、院内で活動している人にも外の自然を感じてもらえるように工夫しました。とくにメディカルコリドーは光沢度の異なる床材を組み合わせたことで、自然の中にある日の光のうつろいを表現することができ、まるで風により木が揺らいでいるような印象をつくることができたのでよかったです。」
「病室以外もあなたの空間」ということを表現したかった
武田さん:「病院ではなく自分の住まい(“すみか”)にいるような雰囲気にすることで、自宅と病院の間をゆるやかにつなげ、自宅療養と入院治療の環境変化を低減させるようなデザインを目指しました。また、患者さんの居場所は病室だけではなく病棟全体であるという意識から、あえて床材を病室と同材にして空間を区別しないようにしたり、患者さんの活動領域をさらに広げる仕掛けとして、廊下の各所にベンチを配置し、患者さん同士やお見舞いに来られた方が談笑したり、歩行リハビリの休憩スペースとして利用できるようにしています。
病院では足元に気を付けながら歩く人が多いので、床材にいろいろな柄や色を使用し、目も楽しませながら移動できるようにしました。」
──普段、空間デザインにおいて心掛けていることやこだわっていることをお聞かせください。また、そのなかで床材を選定する際に重視しているポイントなどをお聞かせください。
武田さん:「床材を選定する時は、発色の良さを大事にしています。色数や色味のレパートリーが多いと提案しやすいです。特に茶色やグレー系などナチュラルな色味はメーカーによって異なりますので、よく比較検討をさせていただいています。表面の加工(エンボス加工や光沢感)なども重視しているので、選定の際はサンプルを必ず大判で取り寄せ、複数枚を並べて吟味します。TAJIMAのショールーム(※現在は施主・設計者を対象とした、プロ向けの体感型ラボ「東京ELab(エラボ)」として運営)のような場所があると、メーカー選定で採用するきっかけに繋がります。
病院では防滑性の床材を求められることが多いです。今回病院から「滑りにくさ」についての評価を求められた際も、明確に数値を出していただいたので採用に至りました。」
──今後、使ってみたい色柄やデザイン、機能の床材についてお聞かせください。
武田さん:「最近、お客様からナチュラルな表現や、室内に緑を取り入れる空間デザインの要望が増えてきているので、緑色のレパートリーを増やして欲しいです。深みのある緑やエメラルドグリーンなどバリエーションが増えると嬉しいです。
また、病院の床は求められる性能が多いことを今回の案件で実感しました。病室ではキャスターの耐動荷重性、ロビーや通路は防滑性、リハビリ関係ではクッション性、そしてデザインのよいものが求められました。病院では使用する場所の用途によって求められる性能が異なるので、ひとつの空間で同じ性能を持った床材を貼り分けて使うのはなかなか難しいです。いろいろな性能を兼ね備えた床材があると、貼り分ける時でも同じシリーズから選ぶことができるので、柄や色合いなどが自然になりよいと思います。今後もTAJIMAの床材に期待します。」
埼玉協同病院/ふれあい生協病院で使用されている床材
- タイル
マティル Mサイズ抗菌/防汚/石目柄
MBM-564 , MBM-566
- タイル
マティル Wサイズ抗菌/防汚/石目柄
MBW-551 , MBW-548
- タイル
マティル Eサイズ抗菌/防汚/石目柄
MBE-144 , MBE-141 , MBE-224 , MBE-230
- シート
パーマリューム フィラーレ抗菌/ノーワックス/パターン柄
PF-5068