「取合い」ってなに?
「取合い」という言葉、聞いたことありますか?
取合い(取り合い)とは建築用語の1つで、例えば、屋根と外壁・笠木と外壁など異なる部位が接合している箇所のこと、または接する部位どうしの処理を調整することを指します。
このような箇所のことを「納まり」とも言い、取合い部の処理がしっかり行われている状態を「取り合いが良い」「納まりがよい」などと言います。
ちょっと耳慣れない言葉ですが、「取合い」は、雨漏り対策を考える上で欠かせない重要なポイントです。
そこで、今回の雨漏り対策講座では「取合い」について解説します。
雨漏りしやすい場所には「取合い」がある
木造住宅で雨漏りが発生した部位のワースト10を見てみましょう。
これは、住宅瑕疵(かし)担保責任保険(※)の対象となった雨漏り事故について、雨漏りが発生した部位をまとめたものです。
※住宅瑕疵担保責任保険:新築住宅に瑕疵があった場合に、補修等を行った事業者に保険金が支払われる制度
雨漏りの発生箇所で最も多いのがサッシまわりで、全体の1/4を占めています。
サッシまわりには雨水が集中しやすいため、雨水を逃がすための水切りや取合い部の対策が十分にできていないと雨漏りの原因となってしまいます。(参考:木造住宅の雨漏り対策は「サッシまわり」がポイント)
また、2位〜10位を見てみると、雨漏りが発生する場所が多岐にわたっていることがわかります。
この中で取合いが関係する部位をピックアップしてみると、笠木と外壁の取合い、防水層とサッシの取合い、笠木と壁の取合いなど、じつに半数以上が取合いに関連する部位となっており、ワースト10の中では「取合い関連」が占める割合はサッシまわりの次に多い19.4%という結果になっています。
雨掛かりの多い建物では取合い対策がカギ
戸建住宅では、軒ゼロ住宅などに見られるような庇(ひさし)の出が少ないコンパクトな形状の家が選ばれるようになり、外壁が雨水にさらされやすくなっています。 気候変動によってゲリラ豪雨や線状降水帯など豪雨に見舞われることも増えており、今の雨漏り対策は「雨掛かり(あまがかり)の多い建物で雨水の浸入をどう防ぐか」がポイントになっています。
そこでカギになるのが、取合い部の対策です。
先ほどのデータからもわかる通り、住宅にはたくさんの取合い部があり、部位も様々です。そのため、雨漏り対策もその部位ごとに適した対策を考える必要があります。
雨漏りは家の耐久性に影響することも
木造住宅では、家を支える主要な部位にも木材が使われているため、雨漏りの発生により家の耐久性に関わる部分がダメージを受けてしまうと、大規模な修繕が必要となる場合が多く、修繕の規模によっては1,000万円程度の修繕費がかかってしまうこともあります。
後々になって「はじめにしっかり対策しておけば・・・」と後悔することのないように、雨漏りを防ぐポイントを知っておきましょう。
雨漏り対策で覚えておきたい2つのポイント
ここからは、雨漏り対策で押さえておきたい取合い部のポイントをご紹介します。
取合い部で肝となるのが、防水層の連続性を確保すること、つまり防水層が途切れないようにするということです。
ポイントは大きく2つあります。
- 取合い部の対策に適した材料を選ぶ
- 正しい施工をする
いくら性能の高い材料を選んでも、正しい手順で施工されていなかったり、防水層に継ぎ目ができていたりすると、せっかくの防水性能が十分に発揮できなくなってしまいます。適切な材料を選ぶだけでなく、正しく施工するところまでが雨漏り対策、と覚えておきましょう。
ポイント1:取合い部の対策に適した材料を選ぶ
雨掛かりの多い箇所や複雑な部位の処理にもしっかり対応できる材料を選ぶことが重要です。 部位によって形状や雨掛かりなどの条件が異なるため、それぞれの取合い部に適した材料を選びましょう。
壁止まり軒部に適した防水シート(壁止まりシート)の施工例
特に雨水が集中しやすい屋根と外壁の取合い部(壁止まり軒部)には、屋根下地材と壁下地の間に取合い部専用の防水シートを施工することが有効です。切れ目のない防水層をつくり、雨水の浸入を確実に防ぐことができます。
軒ゼロ住宅向けの防水シート(とりあいルーフィングF)・ケラバ部の施工例
雨掛かりが特に多い軒ゼロ住宅には、雨仕舞の強化に重点を置いた高強度の防水シートがおすすめです。
例えばケラバ部では、高強度の防水シートを屋根側の下葺材と外壁の防水紙をつなぐように張り下げて施工することで防水層の連続性を確保することができます。
ポイント2:正しい施工をする
2つ目に重要なのが、正しい施工を行うことです。
防水の連続性をしっかり確保することで材料の性能を十分に発揮させることができます。
取合い部は「施工の取合い」でもある
建設現場では工程や関係する施工会社が多岐にわたるため、部位ごとに施工者が異なる場合がほとんどです。そのため、現場の施工者に正確な指示を伝え、現場での作業がしっかり連携されることが重要です。
特に取合い部では、現場の連携不足によって防水の連続性を確保する措置が疎かになってしまう、という不備が発生しやすいため、施工の意図が正確に伝わるよう設計者が図面や仕様書で指示し、取合い部の施工が正しく行われるようにしなければなりません。
この「施工の取合い」が疎かにならないよう、現場管理を徹底して連携不足による不備を防ぐことが重要です。
今回は、「取合い」について解説しました。
雨漏りについて意識する機会はなかなかありませんが、最初にしっかり対策をしておくことで雨漏りリスクを最小限に抑えることができます。
大切な家で長く快適に過ごすために、家づくりの際はぜひ雨漏りを防ぐための「取合い」対策も考えてみてください。
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