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[インタビュー]カーペットタイルのデザインとオフィスコミュニケーション 株式会社イリア
今回はそのなかから「タピス プレイフルデジ」と「タピス トリオス」にスポットを当て、これらのデザインを監修いただいた「ILYA(イリア)」の中村麻子さんとTAJIMAカーペットタイルのデザイナーとの対談形式でプロジェクトの発足から製品化後の印象、そしてこれからのオフィス像についてお届けします。
今回取材にご協力いただいたのは…
株式会社イリア中村麻子さん(左)
ファシリティソリューション部プランナー。ワークプレイスコンサルティング業務に従事。
田島ルーフィング株式会社
浅田茉莉子(右)
開発部に所属し、カーペットタイルの設計、デザインを担当。
この新作カーペットのプロジェクトが始まったきっかけは、2018年夏にとあるセミナーで
中村さんとTAJIMAのデザイナー・浅田が知り合って意気投合したことでした。
コロナ禍前、すでに生まれていたオフィスの「コミュニケーション」というコンセプト
イリア・中村麻子さん(以下中村さん):キックオフは2019年5月ごろでしたね。
どうやったらオフィスでもっとイノベーティブなことが起こせるか、そのための空間ってどうあるべきなのかっていう点がトピックとして上がりはじめていたころでした。
そのイノベーションのためには、やはりオフィスに来て活発にコミュニケーションしていくことがアクティビティとして大事で、そういった空間にふさわしいカーペットタイルにもっともっと選ぶ幅があるといいんですけど、という私の要望みたいなところを吸い上げていただきつつプロジェクトが始まりました。
TAJIMA・浅田茉莉子(以下浅田):まだマスクをしないでお話ししてましたね。
オフィスのトレンド変化があまりに早くて、今後何が求められていくのかがうまくキャッチできずどうしようと思っていたところでした。意気投合できたのはいいタイミングでしたね。
ただ、プロジェクトのスタート後にコロナ禍があって、世の中とオフィスに求められるモノ・コトがどう変化するのかっていう不安がありました。
中村さん:本当にコンセプトがコミュニケーションでいいでしょうかっていうご相談もいただきましたね 。
ただそれでもやはり、在宅勤務が普及するなどオフィス以外の多様な働く場所の選択肢が広がったからこそ、オフィスに来てコミュニケーションをとることの価値がよりいっそう高まるのではないかと考えていたので、製品のコンセプトは変えずにこのままいきましょうということになりました。
浅田:製品のデザインができあがっていくなか、色を決めようかという段階になってやっとオフィスにおけるコミュニケーションはやっぱり大切なんだっていう確信が持てました。
社会的にもコミュニケーションスペースが必要であるという考え方が残ってくれてよかったです。
当時は「イノベーティブ」や「イノベーション」という言葉がキーワードとなり、オフィスシーンではイノベーションセンターやコワーキングスペースが世の中に広がり始めていたタイミングでした。コロナ前コロナ禍中をへて、働き方やオフィスの在り方が変化していくなかでも、「コミュニケーション」というワードはこれらの製品のコンセプトとしてありつづけました。
安定した図形である三角形を用いて人と人との調和を表現した「トリオス」
中村さん:カーペットというとやっぱり四角い500角のラインが出ていて、カチッとしたなかに柄があると思うのですけど、その四角いラインはグリッド天井とあいまって、空間構成に四角い印象を与えすぎて「THEオフィス感」を助長していると感じていました。
そうではなくて決まり切った四角い枠のなかに納まらない、多方向にグラデーションがかかった柄ができないか、タイルカーペットが敷かれたオフィス空間からもう少し多様性や自由さを表現できないかという構想から検討が始まりました。
そこにはアイデアが生まれる多様な人と人とのコラボレーションの場において、もっと自由でいいんだと思わせてくれる柄をタイルカーペットで作れないかという好奇心がありました。
三角形はバランスがいい安定した形です。人と人との調和の集合体が多様性をもっていくイメージは四角ではなく、他方向性のある三角形でなければダメだと当初からイメージがありました。
浅田:もともと「人と人との調和」というお話をいただいていて、そこからこういう柄ってどうですかというサンプルを作って見ていただいて。
この表現はできないけど、こういうグラデーションの作り方があるんですといったやり取りをしながら、現物に落とし込んでいきました。
中村さん:私のほうからはこういう考え方でものを作りたいというインプットをさせていただいて、テクニカルな面でバリエーションや表現を見せていただきながら、本当にたくさん試作を作っていただきましたね。
浅田:サイズやグラデーションのバリエーションのどれがイメージに近いのか、実際に見ていただきながらでした。
中村さん:初期の試作品が出てきた段階で、もう「あ、すごく新しくて面白いものができるんじゃないかな」っていう予感がしました。
カラーについては、安定のグレーのグラデーションで3色があるのがいいと思っていて、これに私がTAJIMAらしいと思っているブルー、そしてイエロー系を入れておきたいなと思っていました。
とくに明るめ、中明度からもう少し明るい高明度系のグレーと合わせる差し色として、黄色は作っておきたかったんです。
ほかにも候補はいろいろとありましたね。抹茶色とか奈良漬、柴漬け色とか、抹茶、ウグイスとか。
和の話もあったんですけど、もうちょっとスポーティなダイナミックな元気な色を入れましょうということで現在の色にまとまりました。
2022年春の発売後、タピス トリオスは、お客様から「本当に新しい考え方と柄」といわれるほど好評のアイテムとなりました。オフィスの什器がどんどんシンプルになる傾向のなか、カーペットタイルも単色でスッキリ見せたいけれど、汎用品レベルの製品とは差別化を図りたいといったシーンで、数多くご採用をいただいています。
有機とデジタルの融合を目指した「タピス プレイフルデジ」
こだわり抜いたのは丸の表現でした
中村さん:スペースダイもオーダーさせていただきました。タピス プレイフルデジのほうですね。カラーグラデーションのイメージを何度お送りしたことか。
柄のこだわりでいうと、ポンポンポンとした丸い柄の出方をすごく検討いただきました。
もともとは有機的さとデジタル感を融合させたものを作りたいっていうアイデアでした。*スペースダイ:1本の糸を複数の色で染色したもの。単色染めの糸と比べてより深みのある表現が可能になる。
浅田:最初のころは丸がなかなか出なくて。
織り方から糸の加工まで、TAJIMAのノウハウを総動員しました。
中村さん:カラーについては、ここ数年のあいだで建材だけでなく家具でもグレイッシュな色がきていて、
まずグレーのバリエーションが欲しいということで、グレー系でグラデーションを作っていただきました。
そのほかはちょっとグレーのニュアンスが入ったまま色味を入れた、いままでにないものをという狙いでした。
TAJIMAといえばブルーというイメージを私は持っていて、ブルーはマストだと思っていました。
デニムシリーズのカーペットなどは、ああいった感じはなかなか他社ではないなと感じていて、すごくオリジナルな特徴なのかなと思っていますね。
いまのオフィスに求められる要素をデザインに落とし込む
中村さん:スタートから発売までにコロナ禍を挟みましたけど、本社オフィスの意味とか、オフィスに行く意味とか、オフィスで求められるコミュニケーションについては、コロナの前から少しづつ考えていた部分でした。
さらにダイバーシティも大事だと考えると、四角の中にはめなくてもいいような床のパターンなどをオフィスに取り入れたり、少し部屋の用途が変わっても問題なく使えるような、使いやすさのあるフレキシビリティについても、使う側の方からよくお話をいただく要素でした。
これらを考慮したカーペットのこの新製品は、ちょうど時代にはまるタイミングだったのかなと思います。
浅田:中村さんがイメージされている空間のイメージがすごくわかって、たしかにこういうものが世の中では求められるなと理解すると、こんどはその強いこだわりをちゃんと汲まなきゃという思いが出てきましたね。われわれも技術的なところで、どうにか中村さんに「うん」って言わせないといけないと。
中村さん:最近のオフィスの共用部など不特定多数の方に使っていただくような空間には、自然に関係するようなキーワードがコンセプトに掲げられるケースがけっこうあるんじゃないかなと思うんですね。製品コンセプトとしても海や風など自然に関係するものはやはり人が過ごす場所には馴染みやすいので。
今回のタピス プレイフルデジでは、ハイテクで先進的なイメージを表現する「デジタル」と自然を感じさせる「有機的」が融合したイメージを目指して製作を進めました。そうしたバウンダリーレスな(境界のない)ニュアンスの表現はカラーバリエーションにもチューニングさせていただいたつもりです。
これからのオフィス像を探りながらさらなるイノベーションへ
中村さん:これからのオフィス像におけるキーワードを考えてみると、ここ数年ずっと継続している「環境に配慮する」、「サステナブル」という点はたぶん絶対に外せなくなると思うんですね。
オフィスをリニューアルしたら、「使っている建材はもちろんいままでよりエコですよね」という具合に、省エネやカーボンニュートラルに近づけることが当たり前のようにできているだろうと、たぶんお客様は考えているはずです。よりもう一歩進んだ環境配慮が必要かと思いますね。
そして「コミュニケーション」はやっぱり引き続きキーワードになると思います。企業は、オフィスに来るからにはコミュニケーションしてほしいと考えるはずなので、けっこう永続的なテーマなのかなと思う部分です。
さらに「フレキシビリティ」。多様であること。
この言葉にはいろんな解釈があると思います。いろんな用途で使えるとか、いろんな捉え方ができるとか、いろんな人にとって居心地がいいとか。
製品を作っていくうえでこれをどう落とし込んでいくか、概念的なことで難しいんですけど。
この3点は少なくとも外せないかなと思います。
あとは、オフィスに行くからにはWOW感がほしいですよね。お客様からも「このパースにWOW感をもっとほしい」といった言葉が出てくるんです。採用で来た学生の方がオフィスに入った途端に「ワォー、かっこいい」って。
オフィスはブランディングです。本当に。
オフィスはブランディングの一要素として伸びていくんじゃないかなと思います。
そのための空間ってどうあるべきなんでしょうかね、っていうところが課題です。
中村さん:今回、カーペットタイルの開発に関わらせていただいて、ずっと楽しくて、「楽しい、楽しい」で最後までやらせていただきました。ワクワク感を持ちながら、やり続けてきた熱量みたいなものが製品にも現れているんじゃないかなと思います。
と思うことと同時に、新しいものを生み出していくためにいままでにないプロセスを踏んでみたり、いままでにないコラボレーション、体制を組んでみたりすることがすごく有効なんだなということを、このプロジェクトを通して、私自身も実感しました。
このプロセスこそがイノベーションなのかなって思いました。
デジタルと有機的なものの融合をコンセプトに掲げたタピス プレイフルデジは、「映える(バえる)」、「貼るだけで時代にマッチした空間になる」、「バイオフィリックデザインを採用したオフィスに馴染む」といった高い評価をいただいています。今後も続いていくであろう、オフィスのイノベーション。タピス プレイフルデジがそんなシーンでどう受け入れられていくのかが、本当に楽しみです。
TAJIMA本社エントランスには、タピス プレイフルデジが4色のデザイン貼りで施工されていますので、ショールーム等にお立ち寄りの際はぜひご覧ください。
田島ルーフィング 床材ショールーム ELab(エラボ) >
新作カーペットタイルのイメージを体現したカタログが使いやすい
中村さん:このネイビー系のブルーがTAJIMAらしさだと私は感じました。
「品のあるこんなカタログだったらいいですよね」という、ある日の私のつぶやきみたいなものをかなえていただいたようで、このカタログを見たときは、製品を見たときと同じくらいうれしかったです。
すごく見やすくて、ラインナップ全体が見渡せて、何色があるかも全部わかる、そういうページが最初にあって。雑誌を見ているかのようにビジュアルが多いのと、なにせシミュレーションが多い。オフィスのプランが載っているのも、提案しやすくていいですね。
表紙にはプレイフルデジの柄がエンボス加工で施されています。デジタルカタログだとなかなかわかりづらいんですけど、だからこそぜひカタログをご請求いただいて、みなさんにこのエンボスを見ていただきたいです。
浅田:タイルのカラーチャートはありますけど、カーペットタイルはなぜかカラーチャートが少ないので企画しました。設計の方に使い方の説明をすると「あ、すごい新しい」って言っていただけます。
在宅で仕事をされている方もいらっしゃるので、もちろんデジタルカタログも便利なんですけど、やはり紙媒体を手にとって、触って見ていただくという点で評価をいただいています。
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この記事で紹介されている床材
- カーペットタイル
タピス トリオスグラデーション/原着糸/防汚加工
- カーペットタイル
タピス プレイフルデジデジタル柄/原着糸/防汚加工