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柔らかい発泡層つきビニル床シート[TAJIMAの開発床材④ACフロア]
医療施設や福祉施設、文教施設などの空間デザインを考えるときは、患者や居住者、生徒らの利用者に配慮し、より安全性や快適性を大切にすることと思います。そのとき、床面において重要な要素のひとつとなるのが、床材の“柔らかさ”です。床面に柔らかさを持たせることは、転倒時のリスクや普段の身体への負担を軽減することにつながり、利用者の安全性や快適性を高めた空間づくりに寄与します。今回ご紹介するのは、それらの場合に適材となる床材「発泡層つきビニル床シート」です。
安心・安全・快適に配慮する発泡層つきビニル床シート
発泡層つきビニル床シートは厚い連続気泡の発泡層をもち、高い“衝撃吸収性”を備える床材です。そのため、利用者が転倒してしまったときもその衝撃をソフトに和らげることができ、リハビリ施設の患者や福祉施設の居住者、学校の教室の子どもたちなどの安全性に配慮した空間づくりが可能です。また、床との接地面における体圧を分散する効果もあり、膝立ちや床座での作業の際にも、身体への負荷を軽減することができます。
さらに床の柔らかさは、歩行感や疲労感にも影響します。リハビリを行う患者やそれをサポートするスタッフなど、その場のさまざまな利用者のためにも疲労をなるべく抑えられるような床面づくりに配慮したいところです。
TAJIMA 発泡層つきビニル床シート 開発の歴史
この発泡層つきビニル床シートを国内で初めて製造したのが、TAJIMAです。1950年代、TAJIMAは「Pタイル」の開発によってビニル床タイルのパイオニアとなりました。しかし1970年代に入ると、病院や官庁、学校、中高層住宅などの市場において、それらタイル類の採用に減少傾向が見られるようになります。
顧客にいろいろと聴き取り調査を行ったところ、①床面はなるべく継ぎ目が少なくシームレスなほうがよい、②防発音性があり防水層も兼ねられたほうがよい、などの要望が高まっていることがわかりました。それらのニーズに応えるため、またタイル類に続く床材事業第二の柱をつくるため、TAJIMAはビニル床シートの開発に本格的に取り掛かります。
まず1974年、ヨーロッパの床材メーカーから輸入するかたちで、発泡層つきビニル床シート「アコスチフロア」の販売を開始します。保温性、防発音性、感触性に優れる同製品は、設計者や施主から好評を得て、病院や福祉施設、学校などへもうまく導入されているようでした。しかし輸入品ゆえに取り扱いに難しさがあり、低温時の施工性やへこみ回復性にまだ課題がありました。それらの課題を解決し、発泡層つきビニル床シートの国産化を実現するべく、そこから約4年に渡って開発研究や試験販売が繰り返されました。
そして1977年、度重なる試行錯誤の末に、ようやくTAJIMAは発泡層つきビニル床シートの国産化・内製化を実現します。製品名は既発の「アコスチフロア」を踏襲し、新たに「ACフロア」を発売したのです。
新しいACフロアは、大々的にキャンペーン展開した効果もあって、当時の業界が停滞ぎみであったなかでも大きく売上を伸ばしました。これを契機に1980年には、発泡層をもたない汎用タイプのビニル床シート「パーマリューム」を追加で発売。低価格帯を求めるニーズに応えるかたちで、こちらもヒット製品となります。その後も製品の開発、製造、販売の実績を着実に積み上げ、およそ10年でビニル床シートのカテゴリーも床材事業の柱のひとつにまで成長させ、TAJIMAは総合床材メーカーとしてのポジションを確立していきました。
現在のACフロアのラインナップ
厚さは2.8mm、3.5mm、6.0mmの3タイプがあり、安全性(衝撃吸収性)や移動性(車椅子などでの移動のしやすさ)のバランスを考慮しながら、使用場所に合わせて選ぶことができます。
色柄については、病院や福祉施設、学校の利用者がより快適に過ごせるように種類も豊富で、大きく7種のバリエーションを取り揃えています。※厚さ3.5mmタイプは全色受注生産品、厚さ6.0mmタイプは一部受注生産品です。
機能面では衝撃吸収性に加え、高い防汚性によってノーワックスメンテナンス仕様となっており、ワックスがけの手間とコストを軽減できる点が魅力です。近年では環境配慮への意識も高まっていますので、ワックスがけや剥離洗浄時の電気や水を使用しなくて済み、CO₂排出や廃液を低減できることも大きなメリットと考えられます。
また、病院や福祉施設、学校ではさまざまな人の歩行や重量物の移動・設置が見込まれるため、耐動荷重性、へこみ回復性、防滑性、キャスター移動性などにもそれぞれ考慮した機能設計がなされています。さらに、発泡層によって保温性があるため底冷え感を抑え、「コツコツ」という歩行音を軽減し、表層に抗菌・抗ウイルス性がある点なども、利用者に安心感や快適な居ごこちを与えられる要素となるでしょう。
TAJIMA その他のビニル床シートの紹介
TAJIMAはほかにもさまざまな機能・特長をもったビニル床シートを製造販売しています。「パーマリューム」は豊富な色柄バリエーションで使いやすい汎用タイプのシート。「マジェスタ」は木目・石目・抽象柄など多彩で魅力的な色柄を揃える高意匠型のシート。また、「タフゾーン」は全厚有効層で非常に耐久性が高く、「消臭ウェルクリーン」はその名の通り消臭性に優れ、「メディウェル」は衝撃吸収性とメンテナンス性をバランスよく備えた医療・福祉・介護施設向けシートです。
さらに高い衝撃吸収性を求めるときは、TAJIMAのシート製品と特殊発泡シートを二重貼りする工法「タスレイシステム」もご用意しています。それぞれの製品の詳細については、各種デジタルカタログをご覧ください。
快適で良質な床空間づくりを、これからもサポートするために
TAJIMAは現在、ビニル床材のタイルとシート、そしてカーペットタイルの3カテゴリーを製造販売しています。たんに製品を提供するだけにとどまらず、開発製造拠点をもつ床材専業メーカーとして、施工方法などの“床づくり”に関してもしっかりサポートできる会社でありたいと考えています。空間づくりをご検討の際は、ぜひTAJIMAの床材を選択肢のひとつに加えていただけますと幸いです。