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海外技術の導入で意匠性を追求したタイル[TAJIMAの床材ギャラリー|昭和編②]

「TAJIMAの床材ギャラリー|昭和編」では、設計士・デザイナーの方々が「レトロ」について考える際のヒントのひとつとして、TAJIMAの昭和の床材を数回にわたってご紹介しています。第2回となる今回は、1960年代後半〜70年代に発売されたビニル床タイルのなかから、6種類をピックアップしました。
第1回の記事はこちらから
昭和のタイルから紐解く「レトロ」なデザイン[TAJIMAの床材ギャラリー|昭和編①]
Pタイルの進化形 プラスタイルQ・プラスタイルM

1960年前後から、塩ビタイル事業の将来性に魅力を感じた企業の新規参入が相次ぎ、この市場での競争は激しさを増していましたが、1965年以降、国際的な競技大会開催の反動による大不況から、同業者間での価格競争がさらに加速しました。この競争を勝ち抜くべく、TAJIMAは多彩な製品の開発に挑みます。
1966年「Pタイル」をベースにした新製品として、埋め込み模様がユニークな家庭用タイル「プラスタイルQ」を発売します。1967年にはPタイルをイメージチェンジした「プラスタイルM(Mタイル)」を発売。Pタイルよりも流れ模様を強調し、深みのある色調を表現しているのが特長です。
海外床材メーカーの技術導入とエンボスタイルの自社開発

1967年ごろ、アメリカのナフコ社やフリントコート社など海外の床材メーカーからの技術の売り込みが相次ぎます。そこでTAJIMAは1971年にナフコ社と技術提携に関する基本契約を交わし、自社と同社の技術を組み合わせたビニルタイルの開発を目指します。さらに同年にナフコ社へ調査に向かった際には、エンボス技術を有するフリントコート社を訪問。同社のエンボスタイルの輸入販売や技術提携についても検討を重ねていきます。
そうしたなか、為替が自由化されたことにより海外製品を輸入販売するメリットが生じてきたことから、1972年に同社のエンボスタイルを輸入して「フリントタイル」として発売。それと同時に、かねてから独自にエンボスタイルの開発を行っていたTAJIMAは、自社の技術によるエンボスタイルの製品化を実現し、1976年にフリントタイルのシリーズに追加して販売を始めています。
当時、エンボスタイルは滑りにくくハイヒールの跡が目立ちにくいといった機能性があるだけでなく、表面に凹凸のある立体的な意匠は、自由度が高くフラットタイルにはない趣があることからファッション性にも優れていると評価されていました。
画家の名を冠した“芸術的”タイル ピサロン・モンドリアン

なかには海外の画家の名をもつタイルも登場しました。
ひとつめはフランスの印象派の画家、カミーユ・ピサロに由来する「ピサロン」で、1969年に発売されました。その意匠は粒模様が上から下まで通っており、穏やかな田舎の風景画を描いたピサロのタッチを彷彿とさせました。サイズは3×3=9枚で1㎡となる333.3mm角を採用。デザイン、規格ともに従来品とは異なるものでした。
もうひとつはオランダ出身の画家、ピート・モンドリアンの名を冠した「モンドリアン」です。これは、TAJIMAで手がけていたチップを使った意匠と、ナフコ社と技術提携したことで可能となった、プレス成型によって三次元的な効果を出す技術を組み合わせて実現した完全停止模様のビニルタイルで、1975年に発売されました。

先ほどの「ピサロン」や「プラスタイルQ」(1966年発売)といった製品は、Pタイルをベースとしながらチップを使用した新たな試みに、フリントコート社のエンボス技術を組み合わせたものでした。また、同じくチップを使用した「エラスロンド」にはナフコ社のプレス成型によるインレイド床材製法を取り入れるなど、このころは新たな意匠をもったタイルの製品化を目指していました。

木目柄・石目柄の意匠性を追求したマティル・ウッドライン

いかがでしょうか。今回は1960年代後半〜70年代に発売されたTAJIMAのビニル床タイルのなかから6種類をご紹介しました。
このころ、国際的な競技大会開催の反動による不況と同業者間の競争激化を勝ち抜くべく、多彩な製品の開発に挑んだTAJIMAは、エンボス技術やプレス成形によるインレイド床材製法といった海外技術を取り入れ、意匠性の幅を広げていきました。
意匠性を追求する姿勢は今に受け継がれ、現在は高い意匠性を誇る製品として複層ビニル床タイル「ウッドライン(木目柄)」「マティル(石目・抽象柄)」を販売しています。全19サイズ、全363色と幅広いバリエーションをラインナップしているため、お探しのデザインにきっと出会えるはずです。
次回は1970〜80年代に発売されたビニル床シートを中心にご紹介します。こちらもぜひ参考にしてみてください。