かねてより、下葺材を施工してから屋根仕上材を施工する前の降雨により、漏水が発生したとされる事例が報告されています。
しかしながら、それらの多くは屋根の室内側に発生した結露が原因であると考えられます。 結露発生量が多い場合には、野地裏面からボタボタと結露水が落ちてくることがあり、しかも降雨と重なる場合が多いので、 漏水であるとの誤解をまねくことが多々あるようです。
ここでは、結露はどのようなもので、なぜ発生するのかをご説明いたします。
空気中には必ず水蒸気が含まれており、その含まれる量は空気の温度で変わります。
空気は温度が高いほどたくさんの水蒸気を含む性質があり、温度が低いほど少ししか水蒸気を含むことが出来ません。
結露は、水蒸気を含んだ高温の空気が、窓ガラスなどの冷たいものに触れて温度が下がった際に、それ以上含めない水蒸気が水として現れたものです。
飽和水蒸気量:水蒸気を最大限度まで含有して一杯になっている状態(下図参照)
0℃の空気は4.8g/m³の水蒸気しか含めない →[1]
20℃の空気は17.3g/m³の水蒸気まで含める →[2]
身近な例:夏期、冷水を入れたコップに水滴がつく
冬期、窓ガラスに水滴がつく
窓ガラスを外気温と同じ0℃とすると、室内側の水蒸気を多く含んだ空気が、冷たいガラスに触れて、余った水蒸気が結露することになります。
※実際の窓ガラスの温度は、窓ガラスの熱抵抗が加わるために0℃ではありませんが、便宜上0℃としました。
野地板に下葺材を施工した後に、野地板表面に結露が発生することがあります。 これは、多量の水蒸気を含んだ暖かい空気が小屋裏に溜まった状態で、小屋裏と外気に温度差が生じて、野地板の表面温度が低下するからです。 この冷たい野地板面に、暖かく湿った小屋裏の空気が触れて結露が生じるのです。
特に下葺材施工後に降雨があり、野地板温度が急速に低下すると顕著に発生します。この降雨と結露が同時に発生するために、漏水と勘違いされることがあります。
実際には、以下のような要因が複合した場合に結露が発生する危険性が高まります。
実際にどの程度の温度差があれば結露が発生するのかを計算してみました。
屋内 | 屋外 | 野地坂表面 結露量 [kg/m²・1season(100日)] |
|||
---|---|---|---|---|---|
温度 [℃] | 湿度 [%] | 温度 [℃] | 湿度 [%] | ||
1 | 20 | 90 | 17 | 95 | 0.00 |
2 | 20 | 90 | 16 | 95 | 0.47 |
この計算例のように、湿度が高い状況で屋内と屋外に温度差があると、ある点を境に結露が発生します。つまり、湿度が高く降雨の多い梅雨時期等は、少しの温度変化でも結露が非常に起こり易い環境です。
(表の計算では、わずか1℃の温度差で500ccペットボトル約1本分/m²の結露水が発生)
尚、この上に屋根材をかぶせると結露は止まります。これは下葺材と屋根材の間に空気層が出来て断熱効果が働くために、野地板が外気温の低下の影響を受けないからです。
よく下葺材施工後に漏水(実際には結露)が発生したが、屋根材を葺いたらと止まったというのはこのためです。
いままで述べてきたように、屋根の形状・構成、外気の温湿度などの条件が揃って初めて結露が発生します。 その確率はきわめて低いわけですが、それでも毎年必ず数件の発生が報告されています。発生時期は高温多湿となる梅雨時に集中しているのが特徴です。
空気層を設けること、すなわち
などで対応をお願いします。
※尚、「日本防水材料協会」においても同様の見解が出されています。